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山田邸

風の居場所がある木の家の価値

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この佇まいは、昭和初期の建築物としての典型だ。

豊富な湧水が滔々と流れる田宿川を渡り、旧今泉図書館脇のちょっと急な坂を登る。中学生の頃、よく自転車を引きながら通った坂道だ。懐かしさを感じながら、山田邸を目指す。坂を左折し、路地を右に曲がると、急に視界が開けてくる。そこに、大きな庭に囲まれた山田邸はあった。
約束の時間に少し遅れてしまったわれわれを、笑顔で迎えてくださったのはご主人の山田勇次郎さん。暖かな日差しの中、大きな庭で話を聞くことにした。

 

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縁側の引き戸は当時のまま。

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玄関の天井。

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これも、欅の一枚板でできた神棚

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欅の鴨居の上には、手の込んだ欄間。

「以前は製茶業と製材屋を営んでいてね、だからこの家は自前の材木で出来ているんだ。」と家を見ながら、目を細める。「手前味噌かもしれないけど、住みやすい家なんだ。坂の途中にあるから、下からの風が家を吹き抜けて行って、夏は涼しくて気持ちいいよ。それに天井が高く、かなり開放感があってね。」と山田さん。「ただ、その分冬は寒い。必然的に孫たちには評判が悪い。」と笑う。
この笑顔を見て、やはり木の家はいいな、と羨ましくなった。冬は寒い、という欠点を笑い飛ばせるということは、それ以上のよさがあるからだ。風情とはよく言ったもので、“風合い”はもちろんだが、きっと“情”があるのだ。そんな家に住んで、その感覚を肌で感じ取りたい、と強く思う。

これからの家の保存について伺うと、「まぁ維持費やら何やらと、なにかと大変なんだけどね・・。でも、今、これと同じものを建てようと思ったら、お金がいくら掛かるか解らないし、愛着もあるしね。」そして「だから、できるだけ長く残していきたいと思っているよ。」と付け加えてくれた。そのことは、玄関や居間の柱、梁などを見せていただいて納得。親戚の庭にあった一本の大きな欅の木から切り出したというそれは、見事な材だ。赤みを帯びた木肌は、手入れの良さから上品な光沢をみせる。現代では、そうそう簡単に手に入る木材ではなさそうだ。
取材を終え、邸をあとにする。さっき来た坂を下ろうとすると、春の陽光を浴びたさわやかな風が、山田邸へと吹き抜けていった。

DATA
建物についての詳細はこちら(PDF:45KB)

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