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渡辺邸

残したいクラシカルな佇まい

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渡辺邸には洋間もある。
これは外から見たもの。モダンな窓に、古き良き時代のセンスの良さがうかがわれる。

富士市吉原の商店街を北に少しはずれると、往時には「オリオン座」という映画館があった。ノスタルジックな名前とともに、市民のランドマークにもなっていた場所だ。しかし、残念なことに時代の波に呑まれ、今は廃館。その跡地の西にある坂道をしばらく登ると、なまこ壁が印象的な、どっしりとした蔵に出会う。このお宅が、渡辺邸。

 

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欄間や雪見窓に細かな細工が施され、一見の価値あり。

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太い丸太をそのまま使った梁。周囲の廊下はすべて同じ仕様で、各部屋をぐるり取り囲む。

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二つある玄関。
向かって左側が来客用。

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洋間の内部。クラッシックなホテルの一部屋を思わせる。

門をくぐると、驚いたことに玄関が二つ。とまどいながらも、右の玄関の呼び鈴を押す。「どうぞ、おはいりください。」という明るい声とともに、上品かつ柔和な笑顔で迎えてくれたのは、渡辺みち子さん。早速玄関の「謎」を聞いて、納得。左の玄関は来客用。件の玄関から続く廊下は、各部屋を囲むように配置されている。「お客様が、家人と顔を合わせなくて済むように。」との配慮からなのだそうだ。住む人のもてなす気持ちが、素直に現れたお宅だというのが第一印象。

しかし、中に通され強く感じたのは「あ、おばあちゃんちだ。」という郷愁に似た感覚。昔懐かしい祖母の住む家。木の温もりを、肌で感じられる空間。時を経てなお、朽ちてゆくのではなく、人の心に染みいるフィーリング。これは、木という素材だけが持つ特性であり、最大の美点だろう。柱は最近「洗い」を行ったということで、新築のような明るい木肌を見せている。これも木が持つ良さの一つ。大切に扱えば、いつまでも暖かく人を迎え入れてくれる。

「冬はすきま風で寒いのよ。親戚の子供たちには“おばあちゃんち、寒くてやだ”なんて嫌われてるの。」なるほど、縁側の引き戸は建築当時のまま。手葺きのガラスがはめられ、波打つ庭の景色は、味わい深い風情がある。戸袋に収められた雨戸の開け閉めも、毎日の日課。古くても窓だけアルミサッシに改造するお宅が多い中、渡辺邸は水回り以外、ほとんど当時のままだ。
「他に住む所もないから。」と謙遜する渡辺さん。この建物を維持してゆくには、相当の想い入れと手間が必要だろう。見かねて、手入れを手伝いましょうとやってきてくれる方もいるとか。取材してみて、その気持ちがよくわかる。町並みが速いテンポで近代化する中、この家は、渡辺さんの笑顔とともにいつまでも今のままの佇まいを残しておいて欲しい、と強く願う。

DATA
建物についての詳細はこちら(PDF:46KB)

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