ホーム > 木職 〜もくしょく〜 > (元)龍山村森林組合 常務理事 佐藤 明:森林組合:木職
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プロフィール
人材育成や社会保険制度の拡充、製品の高付加価値化など、龍山村森林組合の先進性にあふれた林業への取り組みは、全国の林業関係者からも注目を集めてきた。佐藤元常務は、そうした中で林業で働く者の安定した生活環境の実現を強力に推進してきた立役者の一人。第二次・三次産業に見劣りしない福利厚生面の整備は、山を育てる技術者の養成に大きな貢献を果たしてきた。
普段は現場で職員の作業を監督していたという佐藤さん。
龍山村 森林組合は、日本林業のリード・オフ・マン。
山で働く若い技術者を育成・確保するため、龍山村森林組合が全国に先駆けて「作業班」を組織したのは昭和37年。日本の高度成長の波にのり、多様な製造業が急速に成長していた時代だ。天候に左右される不安定な林業は、安定した給与・昇給、退職金や年金制度など、サラリーマンと比べ様々な面で社会保障制度が貧弱だった。発展する都市部の労働力需要にひかれ、山村の若者たちも街に出て行くようになっていた。こうした状勢を背景に組織されたのが「作業班」である。林業の働き手を組合の職員として迎え、有給休暇や年金、保険、さらには独身寮・世帯者住宅など、働く環境を整備して全国から若者たちを募ったのだ。
「地域のある現場は忙しいけれど、ある現場は暇。暇な者が、忙しい地域で山仕事ができれば良いのだけれど、地域ごとに壁のようなものがあり効率的な作業ができない。そんな古い慣習も残っていました」と当時を振り返る佐藤さん。こうした不効率な慣習を取り除き組合で山仕事のシェアを掌握したり、作業の機械化を促進するなど、龍山村森林組合では林業の近代化に全精力を注ぎ込んできた。意欲的な施策を展開する組合の活動は全国から注目を集め、講演依頼を受け佐藤さんも各地に赴いた。龍山村は文字通り、日本の近代林業のメッカだったのだ。
しかし、最盛期には160余名いた作業班も、現在は50数名と三分の一程に減った。外材の攻勢や、日本経済の長期低迷等により、本来の山仕事が減少している。防風林の整備や草刈など、行政からの仕事をまわしてもらい厳しい状況をしのいでいる現状だ。
だが佐藤さんは諦めてはいない。「21世紀は環境の時代。観光的な視点。産業からの視点。多様な視点から打開策はきっと見つかるはず」。龍山森林組合の新しい取り組みに、期待が寄せられている。
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